機能性表示食品の信頼性向上と業界の健全化を推進すべく、一般社団法人ウェルネスフード推進協会一般社団法人健康食品産業協議会特定非営利活動法人日本抗加齢協会公益社団法人日本通信販売協会の4団体により、2024年に共同設立されたのが機能性表示食品臨床試験のあり方ワーキンググループである。

機能性表示食品の科学的根拠の考え方に関し消費者庁をオブザーバーに迎え、公益社団法人日本通信販売協会、一般社団法人ウェルネスフード推進協会、一般社団法人健康食品産業協議会、特定非営利活動法人日本抗加齢協会及びアカデミアの有識者と検討会を行った。

機能性表示食品臨床試験のあり方ワーキンググループは産学連携による科学的根拠の評価の方法を中心とした議論と推進活動や機能性表示食品臨床試験のあり方ワーキンググループで検討された成果について各団体を通じた業界全体への情報発信活動を行っている。


機能性表示食品臨床試験のあり方ワーキンググループでの検討事項

1.臨床試験(ヒト試験)と臨床研究法について

食品の機能性を臨床試験(ヒト試験)にて評価することについて、研究対象者に原則として病者が含まれておらず、臨床的エンドポイントが疾病予防・治療ではなく健康の維持・増進を目的としていれば、臨床研究法の対象とはならない。

2.主要評価項目、副次評価項目の取り扱い

各エンドポイントは、健康の維持・増進という観点で設定することが重要である。医薬品開発(治験)における検証的試験(ピボタル試験, 第 III 相試験)の枠組みでは、主たるエンドポイント(主要評価項目)が有効性を示す唯一の根拠となるが、機能性表示ならびに食品におけるヒト試験の枠組みは、医薬品とは根本的に異なる事に留意する。食品の機能性を評価するランダム化比較試験を医薬品開発における第 II 相試験に位置付けることで、副次アウトカム評価項目であってもエンドポイントに臨床的意義(すなわち、健康の維持・増進の観点における意義)ならびに統計学的有意性が認められれば、健康の維持・増進における科学的根拠として受け入れられる。しかし、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」(消費者庁:以後、事後チェック指針)では、”主要評価項目が複数設定されている場合であって、一部のアウトカム指標で有意な結果が得られているが他のアウトカム指標では有意な結果が得られていない”場合は、その関連性を踏まえた科学的に合理的な説明が必要である、とされており、届出資料作成の際は事後チェック指針に基づいた記載を行う必要がある。

3.臨床試験(ヒト試験)のサンプルサイズとデザイン

サンプルサイズについては、クリニカルアウトカムを統計的に説明できる人数とすることが望ましい。
〈サンプルサイズの算出について〉先行研究または関連研究における主要評価項目を十分検討し、対象とする試験のエンドポイントでの対照群と処置群との平均値の差とその標準偏差から算出する。その場合、科学的妥当性及び実施可能性を検討したうえ、有意水準は5%(α=0.05)、検出力は80%(1-β=0.8)をサンプルサイズ算出の際の目安とする。実際の計算は、Webツールや無償ソフトウェアによって行うと簡便であるが、実施に際しては専門家のアドバイスを受けることが望ましい。

4.研究対象者の範囲について

消費者庁で別途定められている分野以外は、研究対象者に病者が含まれてはならない。また、試験設計の対象とする領域について、当該領域で対象となる健常者と病者の境界がガイドラインに規定されていない場合は、当該領域の学会にて議論することが望ましい。基本的には、当該領域において医薬品等による治療の対象とならず病者とみなされない者は、機能性表示食品の対象となりうる。

5.プラセボ設計(対照群)および盲検性の考え方

評価の対象とする食品の種別によってプラセボ設計の考え方は異なる。一般的なサプリメント形状の場合は、ある程度の盲検性と識別不能性を担保した試験設計が可能であるが、一般加工食品や生鮮食品は完全なプラセボ食品の製造が現実的に不可能であるため、その限りではない。従って、以下を参考にプラセボ食品と対照食品を設定し、ランダム化比較試験における試験食品同士の比較可能性を維持することが望ましい。
〈サプリメント形状〉研究対象者が被験食品と識別不能な関与成分を含まないプラセボ食品を対照群に設定し、二重盲検デザインとすることが望ましい。
〈プラセボ食品の製造が困難な加工食品:例)ヨーグルト、菓子など〉被験食品と比較して関与成分含有量が低い、できる限り同一性状・同一形態の食品をプラセボ食品として設定し、研究対象者が試験食品の違いを認識できないように工夫した上で、単盲検デザインとすることが望ましい。特に、ヨーグルトにおいては単一菌ではヨーグルトにならないという特性を踏まえ、基本成分に加えて特定菌種を加えた試験で行うことで構わない。
〈生鮮食品〉被験食品と比較して関与成分含有量が低い同一種類の食品をプラセボ食品として設定し、研究対象者が試験食品の違いを認識できないように工夫した上で、単盲検デザインとすることが望ましい。なお、各個別の食品については、一義的に定められるものではないため、慎重な検討が必要である。

6.臨床試験(ヒト試験)の試験期間設定と中間観察時点の取り扱い

健康の維持・増進の観点から、最低4週間程度が望ましい。一方、整腸などの早期から有効性が認められるアウトカムを設定した試験に関しては、特定保健用食品(トクホ)での事例を参考に、2週間でも実施は可能である。また、試験における中間観察時点(すなわち、中間データ)において統計学的有意性が認められていても、最終評価時点において統計学的有意性が消失するケースについては、当該観察時点について作用機序などから科学的に合理的な意義付けができる場合は、有効性評価の対象とすることが可能である。なお、食後高血糖のような作用機序が単回摂取で期待できる機能については当該の限りではない。

7.質問票(質問紙、アンケート)の取り扱い

質問票の利用、下位項目を含む評価内容のアウトカムとしての取り扱いについては、当該領域の学会へ意見を求める。学会の指針がなく、科学的妥当性が十分に検証されておらず、また、広くコンセンサスの取れていないような独自に作成されたアンケート類については、アンケート評価における統計的有意性を根拠として健康の維持・増進効果を示すことは慎重に検討するべきである。なお、科学的な信頼性担保のプロセスとして、当該領域に詳しい専門家グループ、業界団体、学会、消費者庁と事前に相談の上、結果を公表することが望ましい。

8.層別解析に関する考え方

臨床試験(ヒト試験)データの統計解析における層別解析やサブグループ解析については、臨床的・医学的・生物学に意味のあるアウトカムを閾値とした集団での評価であれば、問題とはならない。また、解析の対象とした集団の科学的合理性について具体的に説明することが重要である。一方、解析対象集団における任意の測定閾値のような臨床的・医学的・生物学的に意味のない値(例えば、中央値など)で区切った集団におけ
る解析は認められない。なお、トクホの生活習慣病関連7領域においては、層別解析を必要としない。層別解析やサブグループ解析の実施に当たっても、統計学的方法論について事前に統計解析計画書(Statistical Analysis Plan)にて定めることが望ましい。統計解析計画書に記載がない場合はバイアスリスクが高くなることに注意する。また、部分的な集団の解析においても統計学的な解析に耐えうる症例数が確保されていることが重要である。これらの要件を満たすことができれば、ヘルスクレームの表現として妥当性がある。

9.安全性に関する考え方

機能性表示食品の安全性の考え方については、臨床試験(ヒト試験)における安全性評価、および製品上市後の安全性情報の収集、の2つの観点がある。
〈臨床試験(ヒト試験)での安全性評価〉試験期間における有害事象や副作用の発生情報についてプラセボ食品・被験食品問わず適切に収集し、研究責任医師による食品摂取と有害事象との因果関係判定に基づいて、安全性を評価すべきである。
〈届出後・製品上市後〉社内体制を整備する、社内マニュアルに基づいた健康被害状況の取り扱いを規定するなど、各社が自主的に取り組むことが望ましい。ま
た、可能であれば、速やかに健康被害情報を報告するための医師・薬剤師などを交えた安全性判定委員会を定期開催する、有害事象に関するデータベースを整備するなどの健康被害情報への対応方法が考えられる。

10.研究倫理について

人を対象とする生命科学・医学系研究については、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)を遵守すること。また、臨床試験(ヒト試験)の実施に当たっては、SPIRIT 声明(臨床試験のための標準的なプロトコルのガイドライン)、CONSORT 声明(ランダム化並行群間比較試験報告のためのガイドライン)など、各推奨ガイドラインのチェックリストに基づいて試験を適切に設計・実施し、透明性を持って報告することが望ましい。なお、臨床試験(ヒト試験)の実施に当たっては、適切な手順と研究倫理の遵守を強く求める。

機能性表示食品臨床試験のあり方ワーキンググループ設立の背景および目的

機能性表示食品の届出件数は増加しているが、科学的根拠の妥当性や臨床試験の方法においては未だ課題があり、特に科学的根拠を示すための守るべき基準をこれまで以上に整える必要がある。


このような現状から、機能性表示食品の科学的根拠の信頼性を高めるべく、医薬品・食品臨床研究の研究者および業界団体の専門家を迎え、業界全体を対象とした機能性表示食品の臨床試験のあるべき姿についての議論を行うこととした。


機能性表示食品臨床試験のあり方ワーキンググループは、製品の科学的根拠を厳密に評価するための臨床試験のあり方や方法について議論し、各企業の製品開発において守るべき一定の考え方を構築し広めていくことで健康食品業界のより健全な発展に寄与し、同時に消費者に正しい情報を発信することで消費者の信頼と安心を得ることに貢献できると考え、そのように務めていくという。

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